外国人雇用に関する情報

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- 中野区長 酒井直人 × 東京リーガルマインド社長 反町雄彦 特別対談 -
多文化共生社会の実現に向けた中野区の外国人支援の取り組みとは

グローバル化が進む中で、多様な人材(女性、外国人、高齢者、チャレンジド(障がい者)など)一人ひとりが能力を最大限発揮し、価値創造に参画する‘インクルージョン・ダイバーシティ経営’の重要性が広く浸透しつつあります。職場の活性化と企業の成長の新たな原動力として、多様な価値観を持つ外国人材の活躍が期待されています。
今回は多文化共生社会の実現に向けた中野区の外国人支援の取り組みについて、LEC東京リーガルマインド代表取締役反町社長が中野区長の酒井氏に話を伺います。
中野区長 酒井 直人様 第29代中野区長
プロフィール 1971年10月14日 岐阜県生まれ
1996年早稲田大学大学院法学研究科修了後、4月から中野区勤務(広報担当副参事、地域包括ケア推進担当副参事を歴任)。
2018年6月に中野区長に就任。
在職中から、自治体の改善運動を全国で支援するネットワーク「K‐NET」を立ち上げ、まちの清掃ボランティア等にも意欲的に参加。区民の満足度向上を目的とした「おもてなし運動」
で組織風土を変えようと9年間率先して取り組み、職員勉強会を立ち上げて8年間毎月開催。第一回中野区検定1級、中野区ものしり博士号取得。
中野区長 酒井 直人様 第29代中野区長
株式会社 東京リーガルマインド 代表取締役社長 反町 雄彦
1998年、東京大学法学部在学中に司法試験合格。
卒業後、株式会社東京リーガルマインド(LEC)入社。
司法試験対策講座の講義を行い、初学者向けの入門講座から中上級向けの講座まで幅広く担当し、多くの短期合格者を輩出。
2006年取締役を経て2014年LEC代表取締役社長に就任。
LEC会計大学院学長兼務。
株式会社 東京リーガルマインド 代表取締役社長 反町 雄彦

目次

在留外国人が増えている中野区
多文化共生推進基本方針とは
4つの課題「言葉」「周知」「意識」「関わり」
「やさしい日本語」を使う
コンビニで働く外国人
官民連携で進む中野区の未来
多様性の先にある「誰もが活躍できる社会」
特別対談動画

在留外国人が増えている中野

反町:本日は中野区長の酒井直人さんにお越しいただきました。

酒井:よろしくお願いします。

反町:区長とはこれまでもいろいろな活動をご一緒させていただいていますが、今、中野が再開発でどんどん変わっていく中で、区長が今後どういった活動をされるか、すごく期待を持っております。
今日は弊社が運営に関わっている外国人雇用支援センターのHPに掲載する記事の一つとして、今、中野区が積極的に外国人支援に取り組まれている話を中心にお伺いしたいと思います。

酒井:ここに数字があるのですが、令和6年2月1日現在、中野区在住の外国人の方の数は2万1374人ということで、過去最高なんですね。コロナで一度減りましたが、コロナが5類に変わってからどんどん増えだして、今後さらに増えるんじゃないかという感じですね。中野の人口が33万7000人ということなので、割合としては6.3%です。

反町:外国人の在留目的や出身国について教えてください。

酒井:資格別に見ると、留学生が一番多いですね。ただ、永住者とか技術・人文・知識・国際業務、それから家族の滞在も増えています。
出身国は中国が一番ですね。で、韓国、朝鮮で、次はネパール。中野はネパール出身者が多いという特徴がありますね。
参考:中野区統計書2024(令和6年)版

多文化共生推進基本方針とは

反町:23年3月に「中野区 多文化共生推進基本方針」 が発表されましたが、策定の経緯や、区長自身の中野区在住の外国人の方に対する思いなど、少しお聞かせ願えますか。

酒井:元々、中野の10年後について区民の皆さんと一緒に作った基本構想があり、その中で中野の特徴って何かといったら、やはり多様性だよね、と。実際、中野に住んでいる外国人の国籍は120カ国を超えるんです。そして中野は地方出身者も多く、私も岐阜から出てきたのですが、地方から出てきた人がたくさん集まって、しかも毎年3~4万人ぐらいが入れ替わっているんです。
だから、この多様性を生かしたまちづくりをしていくべきだと基本構想の中で定め、それを受けて、10年後に目指す街の姿を進めるための方針ということで多文化共生推進基本方針を定めました。

反町:中野区でどんどん増えている外国人の方に、どういう風に日本の住民と接し、交流してほしいとお考えですか。

酒井:地域の中で外国人が一緒に暮らしているけど、あまり存在もよくわからないということが多いと思います。多様性をまちづくりに生かそうという話なので、そういう人たちも地域でいろいろなコミュニティに属してもらって、最終的には街づくりに外国人の方にも参加してもらうという、これが中野の目指す姿かなと思っています。

4つの課題「言葉」「周知」「意識」「関わり」

反町:中野区の多文化共生における課題として4つの項目が発表されていますだね。
1つ目が「言葉」だということで、新たに外国人向けに相談窓口を開設されると聞いておりますが。

酒井:実は外国人相談窓口が今まで中野区になかったのですが、新庁舎移転後の5月に窓口をつくろうと、新たに相談員となる職員を募集しました。

反町:相談員の採用選考の際のポイントは?

酒井:もちろん資格もみますが、外国人の方のニーズとしては、困り事がいろいろ複数あったり、どうしたらいいかわからないという人がいらっしゃると思うんですね。だから、まずはそれを外国人相談窓口の中で丁寧に聞き取って、どうすれば解決できるかの道筋をつけるのが役割だと思っています。

反町:丁寧にコミュニケーションが取れる方ということですね。

酒井:そうですね。それと、まずは外国人相談窓口があること自体も知ってもらうことも大変難しいと思っています。

反町:課題の2番目の「周知」ということですね。今年は1月に能登半島沖で大きな地震があって、被害が大きかったですが、中野区内でも豪雨被害が言われることがあります。地震や大雨の際に外国人に避難を呼びかけることや、普段から防災意識を持ってもらうことなどの施策はありますか。

酒井:ここに防災地図があるんですが、これは中国語ですけど、各言語ごとにあるんです。おっしゃる通り、中野は昔から水がよくあふれていて、川沿いの近くにお住まいの場合、日本人も含めて自分の家がどうなるのかというのを知らない方が多いので、まずは知ってもらうため各戸配布しています。外国人の方にはもちろん、窓口でお配りしていますので、それを見ていただいて、まずはどこに逃げればいいのかを理解していただきます。

参考:中野区ハザードマップ

今、中野区では総合防災訓練を年に2回やっているのですが、毎回外国人も参加されていますね。例えば、ネパールの方にも参加してもらう、そうすると、ネパールコミュニティーではもし地震が起こったら最低これはやらないと、という情報が広まりますから、そんな風に、少しずつ広めていかなきゃいけないと思っています。

「やさしい日本語」を使う

反町:次の3番目の「意識」という点について、今、区の職員向けに、外国の方でもわかるような「やさしい日本語」を使う研修や、あと明治大学の山脇教授による多文化共生の研修を行っていることをお聞きしたのですが、詳しく教えていただけますか。

酒井:まず「やさしい日本語」というのは重要になってくると思います。例えば私、ハングルを習っていたのですが、ネイティブの人が早口でしゃべると全然わからない。それって日本人が外国人に早口でしゃべっているのと同じなんですよね。
だからまず、日本人はコミュニケーションを取るときにやさしい(易しい・優しい)言葉で話しかけないと伝わりませんよということを学んでほしいですね。「やさしい日本語」の研修は、区役所の職員にも毎年受けてもらっています。受講した職員に聞くと、いかに自分が何も考えずにしゃべっているか、外国人の方には全く伝わらないんだということを思い知るそう。
ぜひ中野区の企業の皆さんにも「やさしい日本語」の研修を受けてもらいたいな。

反町:弊社でも、宅建の教材で、例えば中国国籍の留学生で、日本の不動産会社に就職された場合など法律用語が本当にわからないので、やさしい日本語を使って説明するというような用語集翻訳版教材を作っています。

また、初めて外国人を雇用する企業様向けや受け入れ企業向けに外国人雇用管理主任者資格対策講座のご提供(まず何よりも重要なのが、受け入れる企業側の環境整備)や 外国人本人のスキルアップのための日本で働くためのビジネス基礎講座、 それから日本人と外国人共に多文化理解ややさしい日本語の研修もご提供しております。

LEC東京リーガルマインドの外国人人材育成/グローバル人材育成研修一覧

酒井:さすが!LECさんは既にそういうことをやっているんですね。
やさしい(易しい・優しい)日本語を使って話すことは、日本人にとっては、実はとても難しいことなので、やはり研修はやったほうがいいと思いますね。

コンビニで働く外国人の声

反町:4つ目の「関わり」ということで、区内のコンビニで働いている外国籍スタッフと明治大学の国際日本学部の山脇ゼミナールの学生さんと酒井区長とさらに職員の方も交えたグループディスカッションが行われたそうですが、どんな意見が出たんですか?

酒井:周囲から、こんなことをやったのは多分初めてだと言われましたが、いつも利用しているコンビニの店員さんが全員外国人で、でもふだんは何しているのかなという素朴な疑問があって、それをコンビニエンスストアさんにアイデアベースで言ったら、やりましょうという話になったんです。
実際、ディスカッションで、私の目の前に座っていた彼はスリランカの方でした。
そして、やはりそうなのかと思ったのは、情報さえあれば地域のイベントだとか、地域の人たちと知り合うきっかけが欲しいとみんな思っているということでした。
仕事以外のオフのところで何か地域のイベントに参加したり、神輿とかお祭りみたいなのに参加してみたいとも言っていましたよ。
そういうニーズがあることは確かにわかったので、そこをどう届けていくかをまずやらなきゃいけないと思いました。

反町:中野はお祭りが結構多いですよね。東北のねぶたや沖縄のエイサー、盆踊り。ねぶたは、東京でやっているのはここだけだと思います。
セントラルパークでも毎月のようにいろいろなイベントがありますね。

酒井:外国人の皆さんは、どこでその情報を得ているかですが、この前聞いたとき、インスタのアカウントはみんな持っていましたね。
インスタで中野のイベントを発信できれば、フォローする外国人の方はいると思いますね。そういう情報提供があるときっと見てもらえるんじゃないかなと思いますね。

官民連携で進む中野区の未来

反町:中野区で官民連携で、と考えると、やはり一番は駅周辺の大きな再開発ですね。区庁舎移転、旧区役所と中野サンプラザの跡地の一体開発などがありますね。聞くところによると250メートルのビルが建つとか?

酒井:いえ、262メートルです。都庁よりもちょっと高いんですよ。

反町:店舗ももちろん増えるでしょうし、駅ビルもできるとあって、ますます昼間人口が増えますね。
10年後の中野の姿から逆算し、2024年の今から外国人の受け入れ施策を考えていく場合、まず行政があり、そして我々民間企業や、中野ということでサンモールを中心にブロードウェイがあったり、昔ながらの商店街が残っていたり、専門学校、大学などの教育機関があって、本当にさまざまな立場がありますが、まず行政として、一番力を入れていこうという点はありますか?

酒井:外国人の方が、駅周辺を中心に、さらに区内で増えるということは予想していますので、まずは外国人が情報を得やすい環境というのは大事です。ただそれがアクセスできるかできないかというのは大きな差がありますので、外国人に向けての情報発信を充実させていくということがまず一つですね。
先ほど話したように防災は命を守るためには優先してやらなきゃいけないことだと思っていますので、そこはちゃんと力を入れていきます。
それだけじゃなくて、多分、駅周辺についてはいろいろな国籍の人が入って来られますので、どう中野区と関わりを持ってもらうかという、そのアクセスのところを工夫したいなと考えているところです。
ひょっとしたらお子さんが区立の小学校に来ることも考えられますので、そこで保護者として地域に入ってもらうなど、いろいろなところで工夫したいと思いますね。

反町:お子さんがいると、いろんな関わりが一気に増えそうですね。
保育園の集まりがあるでしょうし、小学校を上がればPTAという形になっていくでしょうし、お子さんがいる方はある程度コミュニティがありますね。しかし、コンビニでアルバイトしているとかですと、どこに行けばいいのか悩ましいですよね。
民間企業としても、そういった従業員の方にやさしい(易しい・優しい)日本語でコミュニケーションをとりながら、普段どうしているのかを聞きつつ、みんなで行けるお祭りみたいなところに一緒に行ってみるとかでしょうか。

酒井:いいですね!そうやって地域にも目を向けてもらうということが、暮らしやすさにつながるんじゃないかなと思いますね。

反町:今までは、人が住んではいるけれども、新宿や渋谷へ行ったりみたいな感じでしたけど、今後は中野で住み、働くみたいな形になるといいなと。

酒井:オフィスが増えて大学も来ましたので、昼間人口が増えていくことが大事だなと思っています。昔は夜間人口の方が圧倒的に多かったのですが、今回の開発でまた昼間人口も増えますので、住んで働いて、衣食住が近接している、この環境というのが私はいいなと。これは中野の強みにしたいと思います。

多様性の先にある「誰もが活躍できる社会」

反町:最後に、多様性ということについて、区長から「中野区が考える多様性」とは何か、についてお話いただけますか。

酒井:多様性はそれぞれが好き勝手に生きているんじゃなくて、そこで一緒に仲良く暮らしていくというところまでのレベルの多様性であり、その中で外国人も地方から来た人も一人一人が活躍の場がある、これが中野区の目指す多様性のレベル感かなと思います。外国人の皆さんも、日本に来て地域で暮らして地域で必要とされる、その達成感を得てもらいたいと思いますし、それが中野だと実現できる。そんな社会を目指したいと思いますね。

反町:素晴らしいですね。やっぱり一人一人の達成感のためには、その地域なり、会社でもいいと思いますが、そのコミュニティでどういったことが必要とされているかをうまく外国人の方に伝えていって理解してもらうことが重要ですね。

酒井:はい、やはり相互理解をうまくやっていかないといけないですね。

反町:ちょうど弊社(中野本部)が新庁舎の隣ということで、中野区の活動にいろいろ一緒にやっていけたらと思っておりますので、よろしくお願いします。

特別対談動画

多文化共生に関するLECの取り組み

わたしたちLECは、社会的使命として「AI時代において倫理と知的創造を担う人財の育成と、人類の持続的な繁栄に貢献する経営管理者の養成」を掲げており、ESD(Education for Sustainable Development=持続可能な社会の担い手をはぐくむ教育)活動を通してその実現に取り組んでいます。

急速な少子高齢化とそれに伴う人口減少により国際社会での影響力も低下の一途を辿る日本において、未来に向けた解決にはダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)を浸透させ、社会への主体的な参加者を増やしていくことが重要です。

近年その中心として考えられているのが外国人の迎え入れですが、島国である日本にとって他国・他民族との共生はまだまだ不慣れなものであり、文化や受け入れ意識はもちろん、法整備も追いついていなかったことにより、特に技能実習制度などを巡っては多くの人権侵害や不法就労などの問題が生じていました。

政府や公共団体による見直しも進んではおりますが、企業としては、それに先んじて積極的な行動を起こしていくことが求められています。

LECはこの社会的な要望に応えるため、外国人の適切な迎え入れに必要となる外国人雇用に関わる法制度や、日本人・外国人双方に必要となる多文化共生に関わる教育、外国人がより活躍するためのビジネススキル教育、情報交換ネットワークの構築など、特に「人」に対する教育・育成を通して持続的に成長を続けられる社会の実現に寄与していきます。

LECのサスティナビリティへの取り組み

外国人雇用支援センターについて

「日本と海外諸国の人々が、相互理解のもと共生社会を実現できる環境づくり」を目指して、2019年にLECと関連団体・有識者メンバーにより設立した外国人雇用を支援するためのプラットフォームです。外国人就労者と雇用主の双方が、国境の壁を越え同じ目標に向かい協働していける環境構築を支援するため、「外国人雇用管理主任者」資格認定を通した企業担当者や専門家の育成、外国人就労者向けの教育コンテンツの提供、各種情報発信セミナー、専門家・サービスの紹介等をおこなっています。

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