暮らしてみて好きになる国、日本を創る
企業からのメッセージ 12
今回、取材にご対応いただいたのは
Jコンサルティング合同会社 代表
一般社団法人EDAS 理事高橋 恵介 氏
外国人雇用にかかわるようになった経緯
私はクリスチャンの家庭に生まれ育ち、1990年に牧師として歩み始めました。当時、日本では外国人の数が増え始め、社会的にさまざまな課題が表面化していました。しかし実際には、多くの外国人が真面目に働き、誠実に生活しており、偏見を持たれるべきではないと強く感じていました。
私が運営している教会にも多くの外国人が礼拝に集っていました。その姿を通じて、彼らが一時的な滞在者ではなく、地域に根差して暮らす存在であることを強く意識するようになりました。
その思いから「外国人は一時的な滞在者ではなく、優良な顧客であり、地域社会を支える市民でもある」という認識を広めたいと考えました。大手通信会社に働きかけ、外国人利用者が料金をきちんと支払っていることをデータで示した結果、外国人向け営業施策は大きな成果を収めました。
その後、総合電機メーカーでは多言語通訳コールセンターの立ち上げを担当し、2012年には全国1,700の自治体に導入が広がりました。現在も、一般社団法人EDASの理事として、外国人が安心して暮らせる社会インフラの整備に力を注いでいます。
企業へのメッセージ
近年、日本の公共サービスは多言語対応が進み、外国人も情報を得やすく、申請しやすい環境が整いつつあります。自治体も外国人雇用の推進に積極的であり、企業にとっても「受け入れ」「定着」「戦力化」をどう設計するかが重要なテーマとなっています。
大切なのは「郷に入れば郷に従え」という姿勢ではなく、外国人との円滑なコミュニケーションを意識することです。その一例として「やさしい日本語」の活用があります。
たとえば、
・「確認してください」ではなく「もう一度見てください」
・提出期限」ではなく「しめきりの日」
といったように、難しい表現を避け、誰にでも分かりやすい言葉に置き換える工夫です。企業がこうした配慮を持つことで、外国人材は安心して働き、力を発揮しやすい環境を得ることができます。
今後の課題と展望
外国人労働者の受け入れは、職場だけの問題ではありません。今後は家族や子どもたちへの支援がますます重要になります。特に、家族帯同で来日した子どもたちは、学校や地域に馴染むのに時間がかかることが多いのです。
これまでは工場のある地域で多く見られた課題でしたが、特定技能2号等の拡大により、介護・建設・農業といった分野を通じて全国に広がっていくと考えられます。地域の小学校や教育現場が新たに直面する課題は増えるでしょう。しかし現状では、自治体に十分な知見がなく、入管との連携も不十分です。
共働きの外国人家庭が増え、子育ても教育も日本で営まれるようになる中で、日本語教育や異文化理解を取り入れた政策は欠かせません。私は今後もこうした課題に積極的に関わり、外国人が「暮らしてみて好きになる国、日本」を実感できる社会を築いていきたいと考えています。